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親魚の通年飼育管理 |
冬の間に低温で一定していた気温が、三寒四温と言われるぐらいに日々の気温がめまぐるしく変化し朝晩の気温の変化も激しい時期です。自然界の海や池は容積が大きいぶん水温はまだ冷たいままなのですが、人工の飼育池や飼育容器などは容積が小さいぶん、気温変化に伴って水温変化が激しくなる時期です。このような時期の水換えは、今までの冬眠から完全に覚醒しきっていない金魚にとって急激な環境変化をもたらすこととなりますので、晴天で風のない暖かい日の、日中を選んで行うようにしなければなりません。飼育容器の古水の3割を取り出し取出した量と同じ分量を汲み置きの水より新水として加え元ある量とします。つまり、古水:新水の割合は7:3ぐらいとし、あまり急激な水換えは行わず、暖かくなるに従って飼育水も悪化するので、徐々に水換えの回数と量を増やしていきます。つまり、飼育水の状態から目が離せない時期なのです。 産卵は桜の咲くころから6月まで何回かに分けて行われます。やはり水温の変化が激しい時期ですが、水温が20℃以下なら、春先と同じく古水7:新水3の割合で水換えし、青水の色をまだ急激に薄めてはいけません。また、水温が20℃以下のうちに雄と雌を分けておきます。なぜなら、水温が20℃を超えるような日が続くようになると産卵行動(雄が雌を追尾し始める)に入るので、勝手に放卵・放精してしまうと受精卵を上手く採取できません。ちなみに餌の与えすぎは産卵意欲を低下させ、水換えによる環境変化は放卵・放精を誘発してしまうので、産卵前は餌を与えず、水換えしてはいけません。後は、天気予報などで、水温20℃以上となる暖かい日が続くような時期を調べておいて、その産卵予定日に別飼しておいた雄と雌を「新水100%の水中に産卵床を敷いておいた産卵用のトロ船(産卵池)」へいっしょにいれてやります。(詳細⇒次項、「採卵と稚魚の飼育」を参照してください)これは、新水による刺激によって産卵、射精を促進するのがねらいです。翌日、産卵池を覗いてみて卵を確認できれば成功です。(確認できないときは、そのまま待つか、ヒーターで水温を18〜23℃に保温します。)産卵が終われば雄と雌をまた別の容器にいれて餌は与えずに、休ませます。刺激があるといくらでも産卵、射精してしまいますから、魚が疲労せぬよう梅雨明けぐらいまでは、雌雄別飼いとしたほうが無難です。産卵池は、稚魚が孵化して、ある程度大きくなるまでは、水換えしてはいけません。(卵や稚魚を捨ててしまう可能性が大)また産卵池の水温は17〜20℃を保つようにヒーターで保温すれば奇形魚の発生率が低くなると言われています。 梅雨の晴れ間に水温が急激に上昇して青水が濃くなり悪化しやすく、雨続きでは、日照時間が少なく水温が急激に低下し魚の体調が悪くなりやすい時期です。また、カビが発生しやすく白点病(小白点が鰭や体表に発生し、食欲不振、死にいたる)に罹りやすくなる時期でもあるので注意が必要です。水換えは、古水3:新水7ぐらいで、春先よりも青水の色を薄めにしておいたほうが無難です。これから夏に向かい水温上昇とともに餌をよく食べる時期となりますが、餌残りかすからカビが発生しやすいので与えすぎは禁物です。食べ残さない程度が良いでしょう。 水温も25〜33℃の高温帯で一定し、金魚も活発に動き回り餌をよく食べます。この温度帯では死んでしまう病原体が多くあまり病気にはなりません。ただ、日照りで尾が焼けたようになる尾焼けに注意しましょう。(簾などで直射日光を避ける)金魚は夏の風物詩といわれ、この時期の飼育は簡単です。(金魚は本来、適水温が高めで18〜28℃前後。淡水の熱帯魚と共生可能で生存水温帯は0〜39℃とも42℃ともいわれています)ただし高水温による水質悪化が激しくなり、水換えの回数を多くしないといけません。古水1:新水9ぐらいと言われますが、ベテランは100%の新水にそっくり入れ換えてしまいます。(古水を捨てずに別容器にとっておき、弱ったときにその金魚を古水の容器にいれてやるか古水を少し池に戻せば良い)ただし、容器はすすぎ洗う程度で、藻をすべてハガシ取ってはいけません。付着した藻は金魚にとって重要なミネラルや植物性蛋白の餌となるので大切にします。また、水換えしても2〜3日ですぐに青くなったり白くなったりする場合は魚の数を少なくしたほうがよい証拠ですので薄飼いにしてください。濾過器も水換時に大掃除したほうが水換えの回数が減って楽です。また、成長期なのでついつい餌をやり過ぎてしまうのですが、残餌は凄まじい勢いで水を青く濁らせてしまいますから毎日世話のできないかたは、ほどほどにしておくのが無難です。 当歳魚(その年生まれた稚魚)は、黒子(鮒色)から赤色へと完全に色変わりし、明け二歳魚も、いかにもランチュウらしいどっしりとした体型となって越冬にそなえて荒食いする時期です。また、品評会への出品予定魚に餌を十分与えて十分運動させ、来春の採卵予定の雌にも餌を十分与えて栄養を蓄えさせる時期といえます。また、いままで体型の悪いと思われていた魚に良い意味での体型変化が起こり思わずニンマリしてしまうのもこの季節です。(ベテランには期待に満ちた季節)この時期の水換えは春とは逆で、夏場の新水飼育から徐々に古水飼育へ切り替えていかねばなりません。水の緑色を濃くしていくことが必要です。なぜなら古水(青水)は植物プランクトンが水中にたくさん繁殖して緑色に見えるのですが、冬場はこれが太陽の光を吸収して保温の役目を果たし冬場でも日照りが強い日には、蘭鋳は底に付いた藻を極僅かですが食べているからです。秋は徐々に冬場の古水をつくる時期と考えてください。そこで、古水4:新水6ぐらいの割合で、5〜6日に1度ぐらいの日程で水換えを行うのが良いとされますが、あくまで目安なので水換時はなるべく古水を捨てずに別容器に入れておき日当たりの良い場所で青水を溜めておけばいざというときの助けになります。 |
採卵と稚魚の飼育 |
らんちゅう飼育の醍醐味は、なんといっても優良な血筋(泳動・色柄・体型が優良)の魚だけを残し、それを優良親魚として交配させ、さらなる優良魚を目指すという延々性にあります。その作業は楽なものではありませんが一年を通じて来年の目標や期待感に充実した年月を過ごすことができ日々の暮らしに張りと少さいながらも誇りが生まれます。優良魚を作るには優秀な親魚の選定が大きな鍵を握ります。飼育者の努力で良いものに作り上げていくことも可能ですがなかなか困難な作業となります。らんちゅうはやはり血筋がものを言いう世界です。競馬のサラブレッドに似ています。さほど資金がかからない点が庶民の娯楽としての由縁でしょう。親魚の選定と管理、採卵、稚魚の孵化、稚魚の選別淘汰と飼育という技術が必要です。 |
<親魚の選定> |
優良な親から産まれた稚魚がすべて優良魚に育つとは限りませんが、優良血筋を受け継いだ稚魚が生まれる確率はそうでない親から産まれたものより高くなるの自然の摂理です。とは言え一腹3000〜5000匹といわれる一回の産卵で選別淘汰ののち良いものがせいぜい2〜3匹残れば万々歳と言われる世界です。このように、良い親を選んだとしてもなかなか品評会で賞をとれる魚は、ほんの僅かまたは皆無といって差し支えありません。ところで、採卵用の親魚は、参歳(産まれた年から数えてその年で3年目の春を迎える魚、つまり、この世に生を受けて二年以上経過した魚)以上のものを選らんだほうが失敗せずに済みます。なぜなら、明け二歳魚(産まれて2年目の春を迎えた魚)でも抱卵しますが、まだ未熟で受精したとしても卵は未熟卵になることが高い確率でおこります。仮に稚魚が孵化したとしても、正常に発育できないことが多くなります。したがって、参才以上の優良親魚を採卵用に選びます。また、どんな泳動・色柄・体型の親魚を選んでよいのかよくわからない方は、「らんちゅう鑑定講座」のページをご覧ください。 |
<親魚の健康管理> |
飼育者にとっての採卵準備は前年の秋より始まります。秋に、採卵する雌親に十分餌を与え、十分に運動させておいてください。(濾過器の水量を普段より強くするなどし、十分泳がせながら、浮上性の顆粒餌を与えるとよく動いてよく食べるようになる。ただし、一日中泳がせると弱るので注意しましょう。)冬場は、屋外で雨・雪・寒風を避け日当たりの良い場所に飼育池を設置し青水の状態に気を配りながらそっと見守ってやります。冬眠中は餌を与えません(水温10℃以下となる11月下旬〜3月上旬頃)冬を無事乗り切ることができれば、産卵準備に取りかかる春がやって来ます。三月も半ばになると次第に気温も上がり、それにつれて水温も上昇してきます。ただし、朝晩の温度に差があるので、まだまだ本格的な産卵シーズンの到来とはいえません。(水温20℃以下では産卵行動には移しません)この時期にやっておくべきことは、まず長く厳しい越冬のあいだに採卵用の親魚が病気にかかっていないかどうか確認をしておきます。春先によく発生する病気に魚の風邪引き(白カビのようなものが体表に発生)がありますが心配はいりません。対処法は観賞魚用の薬剤ニューグリーンFを適量水に溶かして、5〜6時間ほど薬浴(4〜5日間継続)させるか、軽いものなら、最初の水換時に手のら一つまみの塩を飼育層へ放り込んで様子をみてください。(塩は金魚飼育のキーポイント、あらゆる病気の予防に塩を一掴み池に入れておきます。軽い病気なら塩で治ります。) |
<採卵前の準備> |
春先の日中の暖かい日は、魚がよく動き回るようになります。このような暖かい日を選んで、今年で最初の水換えをおこないます。このとき、いきなりきれいな新水とせず、古水の濁りを少しだけ薄めるぐらいとしてください。(産卵は桜の花が咲くころからはじまる)最初の水換時、雄と雌を別々の容器に移しておきます。餌は少量与える程度で与えすぎないこと。餌の与えすぎは放卵・放精の意欲を喪失させる原因となる。一方、飼育池とは別に、桜の花が咲くまでに産卵池とその中に敷く産卵床の準備をしておきます。産卵床は、タオルや水草、素焼きの鉢などいろいろなものが使われます。慣れてきたら自分でオリジナルの産卵巣をつくりましょう。慣れるまでは市販の産卵巣や水草を束ねて、トロ船60〜80ぐらいのものに入れ、その船を全くの100%の新水で浸しておきます。(新水刺激で産卵を誘発するためです)このときエアーが床の真ん中から出るように床下にエアーポンプを忍ばせておいてください。また、セッティングの前に池の内側は園芸用の防虫ネットを敷いておけば卵の取りこぼしがなく安全です。 |
<採卵の時期と方法> |
桜の花が咲き揃い暖かい日が続いて、日中の水温が20℃以上の小春日和が続くだろうと思われる日取りを事前に調べておいて計画的に行えば勝手に産卵が終わってしまっていたなどという失敗をせずに済みます。このような時期に、別飼いにしていた雄と雌を準備しておいた産卵池に入れてやります。(できれば、メス1匹に対して、オス3匹で受精率を高める)新水刺激によって、大抵は次の日に放卵・放精が終わりますが、うまくいかないときは2〜3日様子をみみます。どうしてもだめなときは、一度しきりなおしてから、もっと暖かくなったころに再度挑戦するかヒーターで人工的に水温を25℃以上に保温したほうがよいでしょう。無事、卵を確認できたらすぐに雄と雌を別々の容器へもどします。通常、産卵行動は1回では終わらず、6月頃まで何回かに分けて起こるので、魚を弱らせないようにします。親魚の飼育池は、水換えと餌やり回数を徐々にふやし体力回復はかります。産卵後の産卵池は、エアーポンプをつけたまま、透光性のトタン板などで覆い保温して孵化を待ちます。ヒーターを入れて水温25℃ぐらいに保温すれば孵化までの時間が短縮でき、朝夕の温度差による奇形魚の発生率が下がります。(稚魚はまだ小さすぎて選別不可能) |
<稚魚の飼育> |
稚魚は、孵化してから2〜3日の間は[さいのう]と呼ばれる栄養の詰まった袋から栄養をとることができのでタワシの間でじっとしてあまり動きません。孵化後3日目ぐらいからブラインシュリンプをおおさじ一杯/day×10日間与え続ける。(ブラインシュリンプは市販品の微小甲殻類の乾燥卵です。水に入れエアーを通気すると孵化しミジンコぐらいのおおきさになります。蓮池に棲むミジンコでもいいのですが確保するのが大変です。)水換えはまだしないほうがいいです。孵化後約2週間でだいたい尾つきの悪いものや、泳ぎの悪いものがわるので1回めの選別を行える大きさとなるでしょう。孵化後2〜3週間でマッチ棒の軸ぐらいの大きさとなり、尾の不正の「差し尾(突っ込み)」「つまみ尾」「腰曲がり」「鮒尾(ふなお=スボケ)」などがわかるようになるが、疑わしいものは間引かず次の選別で処理します。孵化後1ヶ月もすれば、たばこのフィルターほどの太さとなり、ややランチュウらしさがでてきます。それまではメダカに見えます。たばこフィルター大になれば、冷凍赤虫を食べ始めます。選別に自信のない人は、これぐらいの時期から選別すれば良いでしょう さらに4〜5日も経つと、ぐんと太さを増し、小さ目の顆粒状の餌も食べるようになります。口が小さくて食べきれないときは、ぺンチなどで砕いて小さくして与えればよいでしょう。またこの頃から、競争心を失わない程度の薄飼いとし、濾過器を使ってよく泳がせるのがよいでしょう。また、冷凍赤虫とペレット(顆粒)の両方を与えるのが栄養バランスには良いとされています。とにかくよく食べますから、稚魚といってもあなどれません。また、病気の予防に一番簡単な方法として、塩を一握り、池に投じておけば、万全です。また親と同じく、容器に発生し付着した藻は水換時に洗い落とさずに残しておくことを忘れないようにしてください。基本的に当歳魚(その年に孵化した稚魚)の育て方は、ペレットを食べる頃から親魚と全く同じ飼育法になります。当歳魚は次の年の春に明け二歳魚と成るのですが、明け二歳魚は採卵には不向きなので、どうせなら当歳魚の場合は冬場にヒーターをいれて餌やりを続けできるだけ大きく育てておくほうがよいでしょう。(3年目の採卵に備える)稚魚の飼育も初期の餌やり以外は基本的に親魚の飼育と変わりません。 |